WELINK.をなぜ立ち上げたか。
WELINK.のメンバーはバッグ職人やアクセサリー作家で、いわゆる"つくり手"だ。今まで通りの世界だったら、WELINK.なんてメディアを始めようとは思わなかった。
"先が見えない"
いや、こんな状況になる前は先が見えていたのかと言えばそうではない。世界の現状は、不確実、不安定、複雑、曖昧である、という意味の"VUCA"*¹や、持続可能な世界的な開発目標を示したSDGs*²など、先が見えない危機意識から生まれたワードが叫ばれてはいた。だが、それらが世間一般に浸透していたようには思えない。
しかしこの1、2ヵ月、話をすれば"先が見えない"と誰もが必ず口にする。仕事先で業界の話をする時に先が見えないという共通認識を口にする事はあったが、近所の人と「先が見えませんね」なんて話すとは思わなかった。
2020年4月の初旬。
真偽不明な情報が入り乱れ、日々事実や根拠を追うことに疲弊していたなか、つくり手仲間とZOOMで近況報告会を行った。教室やイベントなど、リアルな場での活動ができなくなり、何よりモノが売れず、顧客と繋がれない現状が肌感でよくわかる。当たり前のように“先が見えないね”という話が始まり、結局お互いに具体的な打ち手が見えないまま終了。
入り口も出口も塞がれどこにも行けない閉塞感。そして先が見えず、早く動き出さなければ終わってしまうという焦燥感。
「何かできないかな?」
そんな一言から共感したメンバーが集まり作戦会議が始まった。
私たちはつくり手だ。だからまずはつくり手と繫がりたいと思った。モノが売れずリアルで繋がれなくても、つくり手それぞれの想いや思考を語り合う場をつくり、そこから生まれる意味や価値は伝えることはできる。
そして、「WELINK.」を立ち上げた。
立ち上げたとは言ってもとりあえず体裁を整えただけだし、初めてのことばかりで毎日手探りの状態だ。とにかく走りながら修正するしかない。
それでもこんな状況下で繋がり協力してくれる人たちには、本当に感謝しかない。
そしてそんな繋がりにこれから先の未来を感じている。
*1 VUCA (ブーカ) 「Volatility(不安定性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)」の略。
経済・社会・環境などの世界の現状が、不安定、不確実、複雑、曖昧であり、きわめて予測困難だとする言葉。
*2 SDGs(エスディージーズ)「Sustainable Development Goals」の略。
2015年9月の国連サミットで採択された、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための開発目標。
WELINK. Podcast
WELINK.について
先が見えず何が正解かわからない中で、私たちはまずつくり手と対話をすることに決めた。
つくり手の想いやものの見方、原体験や興味について対話し、その対話の場で醸成される意味や価値を発信したいと思ったからだ。なぜなら私たちもまたつくり手であり、だからこそ、つくり手を知ってほしいという想いがあったから。
そしてその対話を通して、その発信を受け取る人々に次のような3つの「余白」を持ってもらえたらと思っている。
・自分とは違うものの見方を受け入れる「考え方の余白」
・ものの見方の視野が広がり、俯瞰して先を見立てることで生まれる「心の余白」
・焦らず先を見据え、未来をつくる種をゆっくりと諦めずにつくりだしていく「時間の余白」
私たちはこの「余白」が今もこれから先も重要だと考えている。
それにつくり手との対話からこんな意味のあることを発信できたら最高だ。WELINK.が、そんな「余白のつくり場」になれたらいいなと切に願っている。
正解はない。
とにかく走りだして、失敗を繰り返しながら前に進み、そしてWELINK.がいつか、つくり手と人々をつなげる案内役になれたとしたらそんな嬉しいことはない。